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態癖と口腔筋機能障害

歯並びによくない影響を与える癖や口腔周囲筋の働きを改善することは矯正治療を円滑に進め、後戻り防止に有効です。

態癖について

指しゃぶりが歯並びを悪くするのは比較的広く浸透していますが、生活習慣の中には歯並びに悪い影響を与える癖がたくさん潜んでいます。

お口の中をとった模型と照らし合わせるとびっくりするほど顕著に出ている方もいらっしゃいます。こんな癖があったら今日からすぐにやめるように努力してください。それだけでもきれいな歯並びを作る前準備となります。

  1. 頬杖
  2. 頬に手を当てての横向き寝、もしくは枕を頬に当てての
  3. 横向き寝、うつぶせ寝
  4. 同じ方向からテレビを見る(首をひねって右か左を向く時間が長い)
  5. 下唇をかむ
  6. 舌を歯に押し付ける、もしくは歯と歯の隙間から出す
  7. 口をあけたままにしている(口呼吸)
  8. 爪を噛む

などが代表的なものですが、患者さんそれぞれに固有の歯並びへ影響を及ぼす特殊な癖がある場合もございますので、常にお口の中と照らし合わせ何か気になることがあった場合はすぐにお伝えするようにしています。

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口腔筋機能療法(myofunctional therapy:MFT)

MFTとは?

口腔筋機能療法(myofunctional therapy:MFT)は「歯列を取り巻く口腔周囲筋の機能を改善する訓練法」と定義され、口腔筋機能障害(口腔周囲筋の機能の不調和)を取り除き歯列の正常な形態を維持するための環境を作ることを目的に矯正歯科臨床上のニーズから開発され発展してきたお口周りの筋肉への機能療法です。

なぜMFTが必要なの?

歯はお口の中で舌と口唇、頬の力のバランスが調和している位置に並びます。ですから、舌の癖のために上の前歯の内側から外側に力が強くかかれば前歯は外に出る方向に、つまり出っ歯になりやすくなります。逆に咬唇癖があったりやオトガイ筋 (下唇の下方の顎に梅干しの様な皺を作る筋肉)の力が強い場合、下顎前歯はそれら外からの力によって内側に傾きやすくなります。また、お口をいつも開けていて上下の歯の間に舌が挟まっていると、開咬といって奥歯でしっかり咬んでいるのに前歯が閉じない噛み合わせになることがあります。

下の前歯にいつも舌が触って下の前歯を押し出している様な場合は下顎の歯が上の歯より前に出てしまう事もあります。

他にも様々なお口周りの筋肉の不調和が正常な歯列の育成を妨げる可能性があります。

矯正歯科治療を行う上ではこのような力は治療の進行を妨げ、治療後の安定にも悪影響を及ぼすので、お口周りの筋肉の働きを調和させる筋肉への訓練として口腔筋機能療法:MFTを行います。特に小児期の矯正治療対象患者さんでは、90%近くに口腔機能の問題を抱えていることがわかっていますので、小児期に矯正治療を行う場合は機能の問題にも対峙する必要があります。また、当医院の調査でもMFTを行なっている患者さんの方が、治療が円滑に進み、予後も良好であることが明らかになっています。

MFTって昔からあるの?

開発の経緯とその対象

舌や口唇悪い癖は古くから歯科医師を悩ませてきました。歴史を遡れば、近代矯正歯科学の父、Edward Angleがすでに舌や口唇の悪い癖は不正咬合の原因の一つであり、また、それらの克服なしに矯正治療の成功はないと自身の著書中で述べています。米国の矯正歯科医のRogers はできるだけシンプルな装置で患者負担の少ない矯正歯科治療を行うために数々の筋訓練を考案、1918年に訓練法を発表しました。筋機能を訓練で改善するという今日のMFTの原点です。

現在、普及しているMFTのレッスンプログラムは1937年に矯正歯科医のTrusdellらが歯列不正のある患者は口元を歪ませ、舌を突出する食べ方、飲み込み方をしていることを発見し、嚥下時の舌突出;tongue thrust swallowingと不正咬合の関係に言及、それを改善するための訓練を試みたことから始まっています。矯正歯科医のStraubはこの嚥下時の舌突出を改善するための訓練法を言語療法士と開発し、現在のMFTの基礎となっているレッスンプログラムを1962年に発表しました。

その後、歯列への影響は持続的な力として作用する舌位や口唇位であることが解明されるのに伴い MFTも正しい舌位、口唇位の獲得に重きを置くようになりますが、嚥下時の舌突出があればその改善は不可欠であるため、咀嚼・嚥下、安静時も含めた口腔周囲筋全体の筋機能の不調和;口腔筋機能障害を扱う療法として発展、現在に至っています。100年以上の歴史のあるものです。

欧米ではMFT専門で開業しているセラピストに歯科医や医師、学校の養護教員、言語聴覚士がMFTを依頼して施術が行われています。

日本では40年ほど前から取り組まれるようになり、本来の目的である舌癖改善を目的として矯正歯科で、口腔周囲筋の不調和による不正咬合予防のために小児歯科でも応用されています。

最近では顎関節症や閉塞性睡眠時無呼吸症へ応用されるようになり成人や高齢者へのMFTも行われています。またアンチエイジングや素敵な笑顔作りなど審美目的にもMFTが応用されています。

お口周りの筋肉は私たちが思っている以上に日常生活の所作に関連したとても大切な筋肉です。そして口腔機能の発達とともにお口周りの筋肉も発達します。その筋肉が何らかの原因によって正常な発達をしていない、もしくは遅いなどがあると、歯並びに影響するだけではなく、食べ方、呑み込み方がおかしい、仕上げ磨き、歯科治療が苦手、うまく発音できない、表情が歪む等と云った生活の質に関わる問題として、表出することがあります。従って、小児に関しては健やかなお口育ての一環として、必要に応じて定期検診や日々の診療でMFTをご紹介することもございます。不正咬合の予防としてのMFTに関しては賛否両論ありますが舌や口唇の機能的な問題で、不正咬合が引き起こされる可能性がある場合は、まず、お口の機能を整える努力を先に行う価値はあるでしょう。ただし、形態の改善は矯正歯科治療が担うべき事なので、MFTだけで歯並びが直せるという誤解はくれぐれもしないようにお願いいたします。

一方、口腔機能の問題は矯正歯科治療を希望されていない歯科治療の患者様でも認められることはあります。口の中に水が溜まるのが苦手、歯形採りが苦手など、の症状がある場合、歯科治療をなるべく苦痛なく受けていただくためにワンポイントアドバイスとしてMFTをお勧めすることもございます。

このように当医院では歴史的に実績のある矯正治療へのMFTを軸に、お口の健康を保つためのMFTにも積極的に取り組んでいます。

MFTは基本的には矯正治療時に行う療法ですが、ご希望があれば検査・診断の上、矯正歯科治療を伴わないMFTも行っております。ご興味のある方はお気軽にご相談ください。

MFTの対象となる口腔筋機能障害の兆候の例

食べ方

* 著しく早い(丸呑み)、遅い
* 舌が食べ物を迎えにいく
* 前噛み、側方噛み
* 食べこぼしが多い
* 口を開けて、音を立てて食べる
* 硬いものを嫌う
* 食事中に水分を多くとる
* 咀嚼・嚥下時に口元に皺ができる
* 体や頭を動かして嚥下

話し方

* 会話時の舌突出
* 舌たらずな話し方

口元の様子

* 口呼吸
* いつもポカンと口を開けている
* 口唇が乾燥している

その他

* 姿勢が悪い
* 仕上げ磨きが苦手
* 歯科治療が苦手
* よだれが多い
* うがいができない
* 就寝時の鼾

※ これらの兆候の原因はお口周りの筋肉の働きの異常だけではないので精査の上、MFT以外の原因が考えらえれる場合は専門医との医療連携の元包括的な指導計画のもと、MFTを行っております。

MFTの適応年齢

間違ったお口周りの筋肉の働きはなるべく早く軌道修正をしたいのですが、MFTのトレーニング内容は若年者には難しいのでトレーニングの意味が理解できる頃、小学校に入ってから永久歯列が生え揃うまでを本格的なMFTの最適応年齢としています。

MFTのトレーニング

50種類以上もあるトレーニングの中から患者さんのお口の状態によってレッスンメニューを作り診療室だけでなくご自宅でも行って頂きます。

ピアノなどのお稽古事と一緒で、ご自宅で練習を行っていただけないと上手くなりません。効率よく進めるために指導回数の上限を設けておりますので、ご家庭での練習もしっかりと行ってください。

MFT症例

症例①

治療前

MTF指導2年後

症例②

治療前

MTF指導2年後

 

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睡眠関連呼吸障害への対応

かねてより鼻呼吸障害は顎顔面形態の劣成長の原因となるとして、歯科では耳鼻科疾患の治療の必要性を訴えていました。近年、閉塞性睡眠時無呼吸症(obstructive sleep apnea:OSA)が社会的に注目されるようになり、顎顔面形態もその一因として着目されることとなりました。

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