咬合誘導とは?
お子様の口腔を健康に育てるためのすべての小児歯科的処置です。
咬合誘導とは?
咬合誘導とは正しい咬合に導くためのあらゆる小児歯科的処置です。
咬合誘導とは1963年、小児歯科学会誌一巻一号で深田先生により定義されました。
以下抜粋となります。
『歯牙の形成が始まる胎生35~40日頃から、永久歯咬合が完成するまでの長い間、歯、顎、顔はいくたびの変化を重ねつつ発育成長する。その間これらが正しく、あるべき姿にあるか、否かを見守り、またその間に、もしそれらの足並みが少しでも乱れることを発見したら、その因子を追求し、除去に最善の努力を払う。
また、時として不幸にも見過ごされたなんらかの原因でその発育の方向に狂いがあったなら、それらを可及的早期に正しい方向に位置付けることをしなくてはならない。
要するに、以上のような努力のすべてをDenture guidanceと定義づけてはどうであろう。
(中略)
あらゆる小児歯科的処置は、正しい咬合への誘導のためであると言ってけっしていいすぎではない。』
このように咬合誘導とは、広義では正しい咬合に導くためのあらゆる小児歯科的治療を指し、狭義では不正咬合の早期発見・早期治療により永久咬歯列期正常咬合に導こうとする様々な手段のことを指します。
成長発育を見守りながら、不正咬合の芽を発見したらその都度、摘み取りながら、健全な永久歯列期正常咬合に導くことが理想の小児歯科医療であると思うと同時に、かかりつけ歯科医としての私の診療理念でもあります。
実際に当医院に、乳幼児期から来院していただいている子供達には、適切な口腔機能の育成は人生で最初に行える最大の不正咬合予防と考え、哺乳指導、離乳指導から行い、う蝕・歯周疾患の予防だけでなく、口呼吸予防のための口唇閉鎖能の育成など、口腔機能の育成にも携わりながら、不正咬合の芽をその都度摘みとるように努めています。
とは言っても、残念ながら全ての子供達を乳幼児期から見守ることはできませんし、仮にそうできたとしても不正咬合の先天的要因までをコントロールすることはできません。形態の異常として不正咬合がすでに生じている場合は、狭義の咬合誘導として装置を使った小児期からの矯正治療(第1期治療)が必要となります。
成長発育能が旺盛な時期であれば、可及的早期に正しい方向に位置づけすることで、最小限の治療介入で永久歯列期正常咬合となる可能性は高くなります。
一方、矯正歯科治療を希望し、当医院に初めて来院されるお子様の年齢層は幅が広いです。その時点での年齢、成長に合わせた治療を行う必要があります。咬合誘導だけで永久歯列期正常咬合に導ける時期を過ぎている場合は、第二期治療が必須となります。小児期から行う矯正治療(第1期治療)は狭義の咬合誘導の中の一つですが、厳密に言うと第1期治療は第2期治療でのゴールを見据えて、第2期治療を円滑に行うための準備となります。
したがって、不正咬合の芽をその場ですぐに摘むと言うよりは、主訴となる不正咬合があったとしてもあえて第1期治療では治療介入でずに第二期治療時に効率よく直す、という治療方法をご提示することもあります。
このように、小児期に行う矯正治療は治療を受ける年齢、不正咬合の種類によって、治療開始時期を含めた治療方針、治療方法が異なります。
もし、歯並びが気になるのであれば、早めにご相談をください。すぐに始められない場合でも広義の咬合誘導として原因療法となる歯列に悪い影響を与える態癖の改善、口腔筋機能障害へのMFTなど原因療法としてのアプローチが行える場合があります。
1. 歯列弓幅径を広げる装置
シュワルツの装置(単純側方拡大、ファンタイプ側方拡大、偏則拡大前方拡大etc.)
取り外し式の装置です。就寝時のみ使用していただきます。拡大用のスクリューがあり、ご家庭でスクリューを巻くことで顎の横幅が少しずつ広がります。ワイヤーを組み込んだり、スクリューの位置を変えることで拡大だけなく、歯の移動を含め様々な用途に使えます。
クレア:拡大床装置の一種
チタン合金のワイヤーとプラスチックシートを使用しているので、金属アレルギーやレジンアレルギーお子さんでも使用でき、下顎歯列弓の拡大にも優れています。
クレア(上顎)
治療前 | 模型 | 1年後 6mm拡大 |
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クレア(下顎)
治療前 | 模型 | 1年半後 6mm拡大 |
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3D リンガルアーチ、クワドヘリックス、リンガルアクション
固定式の拡大装置です。奥歯にリング状のバンドをつけて歯列の内側に沿わせます。
3Dリンガルアーチ(上下顎)
上顎 | 下顎 |
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クワドヘリックス・リンガルアクション
上顎 クワドヘリックス |
下顎 リンガルアクション |
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急速拡大装置(RME)
上顎骨そのものが小さく、上顎歯列弓の重度の狭窄、交叉咬合、反対咬合となっている場合に用います。ご家庭で、毎日スクリューを巻いて広げます。
2. 機能的顎矯正装置(主に上下顎の位置関係を整える装置)
咬合斜面版
後方に下がっている下顎を前方に誘導する装置です。
咬合挙上床
かみ合わせの高さ増す装置です。
アクチバトール・FKO
下顎の成長を促進して下顎を前方に誘導し上顎前突の改善をしたり、受け口を改善する装置です。
ビムラー
下顎の成長を促進してかみ合わせを浅くしたり、受け口を改善する装置です。側方への歯列の拡大効果も期待できます。
フレンケル
頰や口唇の異常な機能圧を排除し、機能が低下した筋肉が正常に働くようにする装置です。
4. 歯の移動
マルチブラケット
歯の表面にブラケットを付与してはブラケットの溝にワイヤーを通してワイヤーがまっすぐになる力を利用して歯を並べる装置。必要に応じて顎間ゴムなどを併用することもあります。
アライナー
透明の取り外し式の装置を10日〜2週間に一度交換して歯の移動を行う装置。
Simple Molar Controller
手前や内側など本来の位置ではない場所に生えてしまっている奥歯を適切な位置へ移動させる装置。
治療前 | 治療後 |
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加強固定装置(パラタルバー、ナンスのホールディングアーチ)
マルチブラケットで歯の移動を行う際、動いて欲しくない奥歯を動かないように止める装置。
5. 習癖除去 口腔機能獲得のための装置
タングガード
舌の前方や側方への突出防止を物理的に行う装置(取り外し式と固定式がある)。
取り外し式 | 固定式 |
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タングトレーニングプレート
舌を置くべき位置に穴の空いているプレート、舌の位置の意識づけになる。
舌挙上装置
舌を上に持ち上げて保持するのを補助する装置。
6. 治療時終了後の保定装置
ボンディングリテーナー
歯に直接接着する装置。
SOLリテーナー
取り外しが可能で保定力に優れています。
※他にも必要に応じて様々な装置を使用し、なるべくお子様には負担が少なく、効率よく治療ができるように努めております。
MFT
お口周りの特定の筋肉が弱いせいで、歯並びが悪くなっているようなケースではまずこの点を改善しなければ、矯正治療を一度したとしても同じような状態に戻ってしまいます。
患者様によって訓練しなければいけない筋肉が異なりますので、患者様ごとに実行可能な訓練方法をご提案します。
毎日実行できるかどうかが重要になりますので担当衛生士と、効果の出方や患者様の協力度を見ながら進めてまいります。
態癖の改善指導
指しゃぶりが歯並びを悪くするのは比較的広く浸透していますが、生活習慣の中には歯並びに悪い影響を与える癖がたくさん潜んでいます。
お口の中をとった模型と照らし合わせるとびっくりするほど顕著に出ている方もいらっしゃいます。次のような癖があったら今すぐやめるように努力しましょう。それだけでもきれいな歯並びを作る前準備となります。
- 頬杖
- 頬に手を当てての横向き寝、もしくは枕を頬に当てての横向き寝、うつぶせ寝
- 同じ方向からテレビを見る(首をひねって右か左を向く時間が長い)
- 下唇をかむ
- 舌を歯に押し付ける、もしくは歯と歯の隙間から出す
- 口をあけたままにしている(口呼吸)
- 爪を噛む
などが代表的なものですが、患者さんそれぞれに固有の歯並びへ影響を及ぼす特殊な癖がある場合もございますので、常にお口の中と照らし合わせ何か気になることがあった場合はすぐにお話しするようにしています。お子様の癖が気になったら